自分ではどうにもならないこと

 
 世の中、誰も悪くないのに、悲しいことが発生する。
 自分では何もしていないのに、どうしてこんなことになるのかということもある。

 大学のときに、後輩が交通事故で死んだ。
 後輩といっても、同じ寮に住んでいた後輩で、口を聞いたことはあるがそれほどよくは知らなかった。
 
 酒を飲みに行って、帰りに交通事故で死んでしまった。
 即死だったそうだ。

 犯人は見つからなかった。
 ひき逃げだった。
 
 私はそのとき酒を飲みに行っていない。
 
 ただ、彼は前日に私たちの部屋にビデオデッキを借りにきた。
 先輩は、軽い冗談のつもりで貸さなかった。
 「誰に借りて来いって言われたんだ?」
 「○○さんです」
 「○○か、じゃあ貸してやらない」

 私は、そばで壁に寄りかかりながら畳の上に座っていた。何も言わなかった。
 
 別に私が悪いのではないが、「もし」ということがあるのであれば、私が何かひとことでも言っていたら、違う結果になっていたのではないかとよく考えた。
 
 そうやって、誰も何も悪くはないのに、何かの弾みでこういう結果になってしまうことがあることを、本ではなく身をもって感じた。小説では、こんな内容は、いくらでも読んだことはあったが、実際に目の前で起こった、なまなましい事だった。

 
 それ以来、その場にいて、分かっていて、もし自分にできることがあるなら全力で助けよう、がんばろうと思った。
 
 これらを見て昔のことを思い出しました。

http://www.tim.hi-ho.ne.jp/mamoru/index.html
http://www.ne.jp/asahi/masashi/world/index.htm